行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「あー、疲れた」

さくらは、靴を脱いで玄関を上がると、一目散にリビングのソファにダイブした。

今日は本当に疲れた。

時計を見ると、既に23時。

撮影に、実家での意味のわからない両親とのコミュニケーション。

そして、悠紀斗との遭遇。

「意味わからないっつーの」

仰向けで臥床し、瞑った両目を右腕で覆う。

フゥーとため息をつくと、真横に人の気配を感じた。

「えっ?・・・波留斗?」

玄関は間違いなく閉めた。

鍵はさくらの指紋でしか開かないはずだ。

ほとんど動揺することのないさくらだが、状況を理解できずに珍しく目を泳がせている。

波留斗は、起き上がろうとするさくらをソファの座面に押し付けると、顔がくっつきそうな位置にまでにじり寄った。

「どうやって入ってきたの?」

「・・・」

「ねえ・・教えて・・・?」

上目遣いで見つめるさくらの唇を波留斗が激しく貪る。

「ねえ・・・波留・・・」

「好きだ。さくらもmirayも、お前だけは誰にも渡さない」

繰り返されるキスの合間に、紡がれる、波留斗の本音。

「兄さんにだって、俺は負けたくない」

「・・・波留斗・・」

恐らく、兄にコンプレックスを感じながら、己の気持ちや希望を押し隠してきた波留斗が、初めて剥き出しにした欲望だった。

「波留斗は誰にも負けてはいないよ。さくらもmirayも、波留斗が大好きだから」

「・・・それは、仕事の相棒と言う意味だろう?俺は違う。一人の女としてお前が欲しいんだ」

「一人の人間として、男として、波留斗が好きだよ」

「さくら・・・忘れるなよ。もうお前は逃げられない」

赤く色づいた波留斗の唇が、熱い手が、さくらを翻弄する。

いつの間にかさくらも、波留斗の悲しげで情熱的な視線に引き寄せられていた。

さくらの中の庇護欲のような何かが、心を揺さぶる。

これまでも、何度か勢いで身体を重ねてきたが、思いを確認しあったのは今夜が初めてだ。

さくらも波留斗も、人として新たなステージに移行した気がする。

ゲームの行き着く先は、まだ明らかになってはいない・・・。

だけど、おかしいくらい、さくらには不安はなかった。
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