行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「こんな俺を知ったら、さくらは俺を軽蔑するだろうってわかってる。だけど、お前だけには本当の俺を見てほしいし・・・そばにいてほしいんだ。・・・誰にも渡したくない」

きっと、波留斗は、周囲に迷惑をかけまいと自分の感情を圧し殺して生きてきたんだろう。

゛はじめて手に入れたい存在を目の前にして、どうすればいいかわからない゛

そんな波留斗は幼い迷い子のようだ。

「俺は人殺しだ。だから何も欲しがっちゃいけないって心に蓋をしてきた。でもさくらは違う。゛お前なんかが幸せになるなんて許せない゛って誰かに罵られても、さくらだけは俺から離れていってほしくないんだ」

俯く波留斗はどれだけの闇を抱えてきたんだろう。

さくらは、波留斗を抱き締める手をほどくと

「今の話を聞いても、何も変わらないよ。さくらもmirayもこうして波留斗の側にいる」

と言って、波留斗の頬を撫でた。

「ねえ、波留斗。お母様に会わせてくれない?」

「母さんに?」

「そう。まだお会いしてないし、今はお元気なんでしょう?」

「ああ、健康に問題はないと思うけど」

「じゃあ、決まり。お母様の都合がわかったら教えて」

さくらは、机の上に置いていたアニメの台本を閉じると

「ヤキモチやきの波留斗さんには、波留斗しか食べられないさくら特製の晩御飯を特別に提供しよう」

と、言って笑った。
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