行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?

真実

「こんにちは。本日はお忙しい中、お時間を作って頂きありがとうございます」

翌日、さくらは短い髪を綺麗にセットし、さくら色の訪問着を着て、波留斗と共に南條家を訪れていた。

「まあ、まあ、いらっしゃい。・・・あら、貴女もしかして南條ビバレッジのCMモデルのmirayなの?・・・ああ、女の子の方が正解だったのね」

゛あがってちょうだい゛

と優美子に案内された先はリビングだった。

テーブルに子供が好きそうな料理が所狭しと並んでいる。

「お食事はまだでしょう?今日は波留斗さんの好きなお料理ばかりを準備したの。さくらさんのお口に合うといいけど」

ハンバーグにエビフライ、唐揚げにポテトサラダ・・・。

お子さまランチのようなメニューに、さくらは微笑みながら波留斗を見た。

恥ずかしそうにしている波留斗だが、波留斗の好きなメニューという点では、優美子とさくらの認識は違う。

大人の波留斗はどちらかというと茶色いおかず、そう家庭的な和食が好きだ。

どうやら優美子の中では、殻にこもってしまう前の波留斗で時が止まっているようだった。

「とても美味しそうです。こんな素敵なお料理が食べられるなんて、波留斗さんは幸せですね」

「そうなのかしらねえ?波留斗さんも悠紀斗さんもあまり感情を表に出さないから分かりにくくて。その点、さくらちゃんは素直に口にしてくれるから嬉しいわ。やっぱり女の子はいいわね」

波留斗の顔が一瞬にして強ばり、笑顔が消える。

そんな波留斗の手を、さくらはやんわりと握って微笑んだ。

そんな様子に気づかない優美子は、ただ息子の彼女が来てくれたことを純粋に喜んでいるようにしか見えなかった。
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