行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?

声の仕事場

「なんか、さくらのお父さんに続いて、俺の母さんまで・・・mirayはすごいな」

マンションに向かう車の中で、波留斗が苦笑して言った。

「メディアの効果だよ。連日、その影響力に驚いてる」

着物姿で微笑むさくらは、波留斗の手が届く距離にいてくれるようで安心するが、さくら自身が本当はどっちの姿でいたいのかはわからない。

車が信号停止をし、ハンドルから手を離してさくらに触れようとしたとき、さくらのスマホの呼び出し音が鳴った。

同時に信号も青に変わり、車も動き出す。

「波留斗、ごめん。電話に出るね。もしもし・・・ああ、桃子?」

相手はさくらの親友で、TBUの副社長、望月桃子の様だ。

「えっ?今から?・・・ううん、一旦マンションに帰ってからになるから一時間半後って伝えて」

どうやら仕事らしい。

「何かトラブル発生か?」

「アニメの音入れで修正箇所が見つかったらしい。この後、自宅で着替えてスタジオに向かうよ」

「わかった」

波留斗と母親の間の誤解がとけたとはいえ、波留斗の心に巣食う不安の種が簡単に消えるわけではない。

「俺も一緒に行ってもいいか?」

「波留斗も?たぶん大丈夫だと思う」

それから、さくらがアニメのアシスタントディレクターに電話をかけると、波留斗の同行も難なく許可された。

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