心に一滴の雫を。

本当の自分

私は、凱斗に連れ出された、誰もいない食堂で。

「どうしたって言うの?さっきから…頭をグリグリしたり、宇高さんに嘘ついたりー!」

怒っていた。

「頭、グリグリ…。……可愛いっ」

「はい、そこ!そういうことは彼女にだけ言いなさい!どこかの誰かさんに勘違いされかねないっ」

ボソッと呟く凱斗の声も、耳聡く拾って指摘する。

「どこかの誰かさんって?ああ、さっきのヤツ?」

「違う!!」

もはや敬語は崩れ、『礼儀正しい石和 聖歌』は影も形もない状態になっていた。
< 34 / 60 >

この作品をシェア

pagetop