現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「素晴らしいわ。連れて来てくれてありがとう、ヴェネディクト」

心からの賛辞だ。それを聞いてふっと微笑んだヴェネディクトが口をひき結んだ後、視線を上げてグレースを真っ直ぐに見つめた。
これから何か決心を決めて話したい事があるのだろうと、グレースも真っ直ぐに見つめ返す。

たとえどんな事を打ち明けられても、それがどれほど辛い事でも悲しい事でもグレースは受け入れられる。だってヴェネディクトがグレースに話さなければと決めた事なのだから。
それくらい無条件でヴェネディクトを信じている。

「僕に神様の前でグレースに懺悔させてくれるかい?」

「私に?神様じゃなくて?」

「そう。君に懺悔したいんだ、グレース」

普通、懺悔は神様にもしくは神様の代理を務める神父様に行うものだ。ただの女性であるグレースにすべきものじゃない。
疑問が表情に出たグレースにヴェネディクトは軽く苦笑する。
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