現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「言い忘れ?」

「そう。言い忘れ」

そう言ってヴェネディクトは自身も馬車に乗り込むとグレースの横に座って、満面の笑みで顔を覗き込んできた。

「王立図書館で司書に空きが出るって話、あれは僕が空けさせたんだ」

「あ、あ、空けさせた!?」

「だってグレースは何年も待ってるのにちっとも空かなかっただろ?これじゃいつまで経ってもグレースと結婚できないと思って開けさせたんだ。あ、でも心配しないで。辞める司書にはちゃんと高待遇の職を紹介してあるから。その人は司書って仕事内容より給料高い方が嬉しいって言ってたからちょうど良かったよ」

まるで「大した事じゃない」と言わんばかりに言って、ヴェネディクトは更に笑みを深める。

グレースは口をぱくぱくとしながら言葉が出ない。さっきの告白と合わせて衝撃が大きすぎて声すら出せないのだ。

そんな様子を愛しげに眺めながら、ヴェネディクトは御者に出発の合図を出す。

「傍若無人な幼馴染に捕まったプリンセスっていたかしら」

呆然と呟くグレースの言葉は聞こえないフリをして。






fin.
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