現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「あり、がとうございます」

それしか言えない。もう一度頭を下げたグレースはヴェネディクトを促してそそくさと退室した。



「本当に親しいのね。びっくりしたわ」

その後、廊下で控えていた執事に滞在する部屋へと案内されたグレースはヴェネディクトと二人になって初めて肩の力を抜いた。

ちなみに婚約者とはいえ未婚の男女だからと、グレースがとまる部屋はヴェネディクトがいつも使っているのとは離れた場所に用意された。二人で話している今も部屋の扉はちゃんと少し開けられている。

「だから親しくしているって言ったじゃないか」

「でも、こんなに親しいとは思わなかったのよ。だって年齢差もあるし……」

祖父と孫くらいの年齢差があるのにあんな友達のように喋るだなんて、誰が想像するだろう。しかも相手は気難しいと噂に名高いグランサム公爵なのだ。
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