現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない

「ヴェネディクト！だめよ、そんな失礼な言い方。どんなに親しくても、あなたよりずっと年上なのだから、礼節は守らなきゃ」

この場所で一番アウェーなのはグレースだというのにヴェネディクト相手だとついつい、いつもの調子がでてしまった。
すると、そこでまた大きな笑い声が起きた。

「ハァッハッハッ。まったく先程から何度笑わせるつもりだね。これはいい。しばらくは退屈とは無縁の生活が送れそうだ」

「あっ、あの、失礼しました。」

初めてのお家にお邪魔しているというのに、しかも挨拶の場で、なんという失態だと身をすくめるグレースにグランサム公の温かな言葉がかかる。

「本当だよ。君とヴェネディクトのやり取りは聞いていて楽しいし、愉快だ。何も恐縮する事はない。そのまま、いつものままでどうか過ごして欲しい」