現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「とは言ったって、アナベル達はシーモア夫人が産んだ子供だろ?」

「ええ、だから普段は可愛がっていらっしゃるのよ?でもね、私に当たる時は大抵ヒステリーを起こしているから」

父の回復が思わしくなくてまだ月の半分以上寝込んでいるからイライラしているのだ、とグレースも理解している。だけどやっぱり色々言われた後はやりきれなくて、こうやって一人で屋敷を飛び出してきてしまうのだ。

「相変わらず苦労してるんだね」

「そうね。でも大丈夫よ。私はお伽話のお姫様みたいにやられっぱなしで負けたりしないから」

「ははっ。それ、もう口癖になってるな」

「ふふっ。そういえばそうね」



『お伽話のお姫様みたいにならない』

それは継母がやってきてからグレースがよく口にしている言葉だ。

今にして思えば、初対面の自分の態度も褒められたものじゃなかった。最初から『継母』という存在に身構えていた所もある。それでも、だ。

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