桜の下で会いましょう
依楼葉は、泣きそうになるのを我慢した。
「なぜそうも、つれないのか。あの花見の祝宴から、私はあなただけを恋慕ってきた。」
依楼葉は、胸に手を当てた。
「それは……」
それは自分もだと、依楼葉は言いたかった。
だが言えば、左大臣家は破滅だ。
「それは……桜の精の、戯れにございます。」
待てといふに 散らでしとまる物ならば
なにを桜に 思ひまさまし
(桜の花は慌ただしく散ってしまうからこそ、桜をこの上なく慕うのだ。)
それを聞いた五条帝は、急に立ち上がった。
「一度しか会っていない恋だからこそ、あなたを忘れられないだけだと、申されたいのか。」
「何とでも。あの時の姫君は、私ではございません。」
あくまで白を切る依楼葉に、五条帝は背中を向けた。
「……今日の事は、誰にもいいません。」
それだけを残して、五条帝は去って行ってしまった。
「なぜそうも、つれないのか。あの花見の祝宴から、私はあなただけを恋慕ってきた。」
依楼葉は、胸に手を当てた。
「それは……」
それは自分もだと、依楼葉は言いたかった。
だが言えば、左大臣家は破滅だ。
「それは……桜の精の、戯れにございます。」
待てといふに 散らでしとまる物ならば
なにを桜に 思ひまさまし
(桜の花は慌ただしく散ってしまうからこそ、桜をこの上なく慕うのだ。)
それを聞いた五条帝は、急に立ち上がった。
「一度しか会っていない恋だからこそ、あなたを忘れられないだけだと、申されたいのか。」
「何とでも。あの時の姫君は、私ではございません。」
あくまで白を切る依楼葉に、五条帝は背中を向けた。
「……今日の事は、誰にもいいません。」
それだけを残して、五条帝は去って行ってしまった。