桜の下で会いましょう
「母上様は、そういう子供が、大好きですからね。」

「ほほほ。その通りです。」

すると母は、隼也に手招きした。


「はい。何か、ご用でしょうか。東の方様。」

そして、母は隼也の手を握った。

「この家の子になったからには、私の事は、母だと思うてよいのですよ。」

「はい……母上様。」

母と隼也を見ていると、依楼葉も安心した。


どうやら隼矢は、素直な子らしい。

これなら、宮中に出仕しても、なんとか周りに可愛がられて、勤めを果たしていける事だろう。


「父上様。隼也は、すぐ宮中へ?」

「それがのう。」

父・藤原照明は、困った顔をしていた。

「手習いは、読み書きしかしてこなかったそうじゃ。」

「へえ。」

「だから、笛や武芸、漢詩や和歌など、習わせる事は山ほどあるのじゃ。1年は見なければ、ならぬ。」

「1年……」

それが隼也にとって長いのか、短いのかは、やってみなければ分からない。
< 138 / 370 >

この作品をシェア

pagetop