桜の下で会いましょう
突然の隼也の登場に、皆、驚いた。

「これはこれは、秋の中納言殿。急なお出ましとは、何事か。」

不機嫌そうに、橘文弘は隼也に食って掛かる。

「いえいえ。姉君の事でお話されているのが、耳に聞こえてきましたもので。」

隼也は、得意の満面の笑みを、文弘に返した。


「そうじゃ、秋の中納言殿。そなたも、尚侍殿の肩に矢傷がある事、知っておろう。」

「いえ。知りませんでした。」

すると文弘は、パタンと大きな音を出して、扇を閉じた。

「嘘などよい!どうせそなたも、左大臣家の者。尚侍と結託して、主上を愚弄したのであろう!」

「姉君と結託ですか?はてさて、何の結託かどうか、私には分かりませんが、太政大臣殿が仰せの肩の矢傷と言うのは、この事でしょうか。」

すると隼也は、衣を脱ぎ、肩を顕わにした。

そこには、しっかりと矢傷が、刻まれていた。


「ああ!」

「こ、これは!」

驚いたのは、文弘・厚弘親子だ。
< 356 / 370 >

この作品をシェア

pagetop