神志名社長と同居生活はじめました
翌日、家に帰るといつの間の行動なのか分からないけれど、社長の荷物が私の部屋から全て消えていた。
それを見た時、心が酷く痛んだ。寂しかった。
少し前までは、自分の荷物しかないその光景こそが当たり前のものだったのに、今は……自分の部屋を直視することすら苦痛だと感じた。
それくらい、社長の存在が大きかった。
そして数日が経った。
心の傷は治らないままーー寧ろ日々深くなっていくも、仕事はしなければならない。失恋くらいで会社は休めない。
そんな私を心配して、松崎さんがランチに行こうと昼休みに外に連れ出してくれた。
松崎さんには、社長との同居生活は解消されたということだけは話してあったけれど、詳しくは伝えてなかったので、ランチで入店した駅前のイタリアンで、事情を話した。
「まさかあの社長が遊び人だったとはなー」
「い、いえ。遊び人って決まった訳じゃ……」
「本人がそう言ったようなもんじゃん。木月は、そんなことないって思い込みたいだろうけど」
「う、うーん……」
確かに、そう思い込みたいけれど、それだけじゃなくて、本当に何か事情がある気がするんだ……。
それを思い込みと言うんだ、と言われたら何も言い返せないけれど……。