毒は甘くて苦いだけ
「おばあちゃん!ダメだよ!家から出ちゃ…」

祖母が徘徊しているところを、将馬に見られた時があった。こころはとても恥ずかしくなったが、将馬は「大変なんだね」と微笑んでくれて…。

こころは嬉しくて、泣きながら頷いた。

勉強を教えてくれたり、一緒にお弁当を食べたり、学校でしか会えない関係だったが、こころは幸せだった。しかしーーー。

「こころ、あんたの彼氏が女の子たちと遊園地にいたんだけど!」

友達から、将馬が女の子たちとデートをしていると付き合って一ヶ月ほど経つと言われるようになった。

「そんなわけないでしょ。将馬は家で勉強してるってLINEが来たもの」

こころは友達の言葉を気にせず笑う。疑いたくなかった。将馬の言葉を全て信じていたのだ。

「水族館で見かけたよ!」

「私がバイトしてるファミレスに来た!」

「楽しそうにカフェに入っていったよ!」

多くの友達がそう言っても、こころは将馬に問い詰めることも、疑うこともしない。将馬が大好きだから、嫌われたくないからだ。
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