愛は貫くためにある
第2章 妖精を拾った男

怯える妖精

「今日は随分、繁盛してましたね」
美優が桃に笑顔で言った。
「そうねえ、ありがたいことよ」
「ああ、そうだな」
「でも、大変だったでしょ?みーちゃん、あちこち走り回ってたし」
「えー?そんなに走り回ってませんよ」
美優は抵抗した。
「いいや、してたな。走り回る子供みたいに」
「春彦さんまで!ひどい!」
美優が頬を膨らませた。
カランコロンとドアの鈴が鳴る。
「あ!守くんっ!いらっしゃい」
美優は嬉しそうに守のもとへ駆けていく。
「あらまあ。仲の良いこと」
「わかりやすいなあ、二人とも」
春彦が美優と守を見て微笑んだ。
「迎えに来たよ。帰ろうか」
「うん!帰るっ」
桃と春彦がにやにやしていたのに、美優がやっと気づいて照れていた。

帰る支度を整え、美優と守が帰ろうと思いドアへ向かおうとしていると、ドアが荒々しく開いた。
「あ、あの…もう閉店時間なんですけど」
美優がそう言うと、そのドアを開けた主はこう言った。

「あの…僕、この娘、拾いました」

美優と守は驚きのあまり互いに顔を見合せ、桃は手に持っていた皿を落としたが、春彦が受け止めた。
営業時間終了間際に入ってきた、この謎の青年。その青年は可愛らしい女性をお姫様抱っこして立っていた。

一体、この青年は何者なのか。
そしてこの女性は誰なのか。

戸田夫妻と美優、守には全く見当がつかなかった。



「あのう…失礼ですが、どちら様でしょうか?」
桃が不思議そうに尋ねると、青年ははっとして、自分の名前を名乗った。
「申し遅れました。僕は、佐久間 和哉と申します」
「それで…その、抱えている女性は…」
春彦が佐久間を見て言った。
「ああ。この喫茶店の前で倒れていたんです。それで、このお店のドアを開けさせていただきました」
「なるほど」
春彦は頷いた。
「それにしても、この娘拾いました、ってなんですか」
守は意味がわからないとばかりに首を傾げた。
「あなたは?」
「関係者です」
「そうなんですね」
青年は、女性をカウンター席の椅子に座らせて、ぐっすりと眠っている女性の隣に座った。
桃と春彦の立つカウンターの向かい側に青年と女性がいる。
「倒れていたこの娘を見て、助けなきゃって思ったのと同時に、びびっと来たんです」
「び、びびっと?」
守が尋ねた。
「ええ。ほら、たまにあるじゃないですか。何かこう、びびっと来るような出来事というか」
「びびっと来るような出来事…?」
美優は、わかるようでよくわからないな、と思った。
「例えば。ある女性を見てびびっと来て、運命だって思う、みたいな」
「運命ねえ…」
春彦が腕を組んだ。
「女性だけじゃない。びびっとくる物とかありません?時計だとかアクセサリーだとか、いろいろ」
「うーん、まあそれはわかるような気がしますけど」
桃はうーん、とうなっていた。




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