Toxic(※閲覧注意)
なんにせよ、道ならざる恋愛に足を突っ込んでしまった以上、最悪に備えて、多少は状況を把握しておきたい。

私は大和に、家庭のことを軽く尋ねた。

「嫁と子供2人」

大和はまるで、ホテルの予約客について話すかのように淡々と言った。

「子供、2人もいるんだ?」

「うん、3歳と0歳」

「……0歳。へえ、そうなんだ」

随分嫌な顔で相槌を打ったに違いない。

そんな私をちらりと見て、大和は少し笑った。

「生まれたばっかの子供放置して女とセックスしてる、しょうもない男だって軽蔑した?」

「え?」

「 それとも、嫁ともセックスしてんじゃん、っていう嫉妬?」

「……両方、かな」

「そか。じゃあまた、俺から離れる?」

どうせ離れないのを知っているくせに、いけしゃあしゃあと言うのだ。

ムカつく。

ムカつくけど、嫌いじゃない。

「離れてほしいなら離れるけど?」

「んなわけないじゃん」

大和はそう言って、私の髪にキスをした。

「つか響子、何か誤解してるみたいだけどさ」

「誤解? 何について?」

「子供について」

……まだ続くの? この話。

自分から訊いておいてなんだが 、 正直彼の家庭の話はもうおなかいっぱいだ。

大和には、奥さんと子供が2人。

奥さんに対して死ねばいいとか言ったくせに、子作りする程度には、夫婦仲は良好らしい。

それだけわかればもう充分だ。

これ以上はきっと、本気でイライラしてしまう。

「子供について? なに?」

だから私は、眉を潜め、わざと不機嫌な顔で聞き返した。

「あはは、響子はほんと可愛いね」

けれど大和は、憎たらしいほど嬉しそうな笑みを浮かべて、私にキスをする。

そして。

「2人とも、俺の子じゃないから」

理解を超える一言を、まるで愛を語るように、耳元で甘く囁いた。
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