砂時計が止まる日


類が落ち着いてベンチに戻ると貴斗君が類の肩を軽く拳で殴った。



類がそれに笑うと貴斗君の目に涙が滲んだ。

そんな貴斗君の顔に類はばっと野球帽を目深に被せた。



「俺、待ってるから。

お前とまたキャッチボールするの。」



「っああ...。」



震え声の貴斗君の横を類が通り、ベンチに座る。



こんこん



突然、ドアがノックされた。



監督がドアを開けるとそこにはスーツを着た男の人が立っていた。



監督はその男の人と一旦ドアの外に出て1分程話していた。



「おい、類。あと、由羅ちゃんも。」



またドアが開き、今度は類と私が呼ばれる。



「こちら、こういう方だそうだ。」



監督が私の目の前に出してきたのは名刺で、そこには全国でも有名な甲子園強豪校の校名が書かれていた。



「優秀な選手はすぐに多くのスカウトを受けてしまいます。

ですから今のうちから声をおかけしようと思いました。」



私は驚いて類の方を見ると私以上に驚いていて、目がここまでか、というほど開かれていた。



「もちろん、すぐにお返事がいただけるとは思っておりませんので、ご家族とよくご相談なさってください。」



それから少しそのスーツの男の人から話を聞いて、男の人を見送った。



類を見ると心ここに在らず、というような感じで私はわしゃわしゃと頭を撫でその頭を軽く抱きよせた。



「よかったじゃん。」



「...うん。」



少し汗の匂いが混じって私が昔から知っている類の匂いがした。

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