耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

「ミネ―――」

開かれた双眸に映ったのは、涼し気な瞳の端正な顔。
整い過ぎた顔に表情乗せないため、一見クールに見られがちな彼が、本当はとても優しい人だということを、美寧は最初から知っていた。

あの雨の日に、美寧を拾ってくれた人。
そして、今の美寧になくてはならない人。

「―――ミネ?」

目を開けたのに何も言わない美寧の顔を、少し心配そうな怜が覗き込んでくる。

「どうかし、」

「どうかしたのですか」と怜がすべてを言い終わる前に、美寧は怜の首に腕を回し、ギュッと抱き着いた。

「っ、……ミネ?」

戸惑った声が聞こえてくる。
そんな声すらも胸の底をじわりと熱くさせて、瞼にも熱が集まってくる。
下瞼にみるみる溜まっていくしずくが、あともう少しでこぼれ落ちそうで―――

何か言いたそうな気配を怜から感じたが、美寧の口から言葉がこぼれ落ちる方が早かった。

「好き…………」

「え?」

「……れいちゃんのことが、好き」

美寧の瞳から涙がひとしずくこぼれ落ちた。






【第十二話 了】 第十三話に続く
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