耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー



駅前の商店街から住宅街へと真っ直ぐ伸びる道。
その道を、長い脚を忙しなく動かしながら迷いのない足取りで進むその人は、人の流れから逸れるように、脇にある公園へと曲がって行った。

公園の遊具で遊ぶ子ども達や目の前を横切る散歩の犬に、少しも脇目も振らずにサクサクと進みなら、怜(れい)は帰宅後のことを考えていた。

(きっと怒っているでしょうね…。でもまぁ、約束をやぶってしまった俺が悪い、か。)

時刻は午後六時二十分。隠れそうで隠れそうにない太陽が容赦なく照りつけてくる。七月半ばの夕昏は、全くもって優しくない。

梅雨明けが宣言されると、待ってましたと言わんばかりの真夏日に、周りの人々が辟易とした顔をして歩いている。そんな中、スーツを着てネクタイを締めているにもかかわらず一人涼しげに颯爽と公園の中を歩いていく怜の姿は、すれ違う女性たちの視線を集めていた。

(どうやって機嫌を取ろうか…あの可愛らしい子猫の。)

自分に注がれる視線に全くもって頓着ない彼は、自分の気がかりばかりを考えながら、帰宅の足を速めた。

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