旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
幼い頃からずっと一緒にいた大好きな人が、この世界からいなくなる悲しみはどれほどのものだろうか。私には想像さえできない。

お互い想い合ったまま亡くなった彼女に、私なんかが勝てるはずないよ。

胸が痛い。俊也さんのことが好きだからこそ、苦しくてたまらない。

私はこの先、いったいどうすればいいのだろうか。

彼に好きになってもらえるだけで充分だと思っていた。愛してくれなくても、そばにいてくれるならそれだけで幸せだと。

でもそんなことあるわけない。俊也さんの心の中には、いつまでも姫乃さんがいる。それなのに彼のそばにいたって、私が辛いだけだ。

「大丈夫か、芽衣」

お兄ちゃんは腰を折り、涙が止まらない私に寄り添う。

「お兄ちゃん、私……これからどうすればいいのかな。俊也さんのことが大好きなのに、そばにいるのが辛い」

「芽衣……」

好きなのにそばにいることが辛いなんて、初めて知った。

お兄ちゃんは答えに迷っているのか、ただ私の背中を優しく撫でる。すると勢いよくドアが開いた。
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