旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「だが激しい女性関係も、芽衣のことが気になると言い出した頃からパタリと止めた。姫乃からの手紙に、自分以上に愛せる女性と出会ってほしいと書いてあったと聞いていたから、その相手が芽衣だと思ったんだ。だから結婚も許した。……俊也なら芽衣のことを幸せにしてくれると思っていたし、なによりあいつには姫乃の分まで幸せになってほしかったから。それなのにっ……!」

お兄ちゃんは苛立ちを隠せず、勢いよく立ち上がった。

「どうして芽衣に姫乃のことを話せないんだ!? てっきり俺は、芽衣のことを姫乃以上に愛しているから、結婚したと思っていたのに……!」

声を荒らげるお兄ちゃんに、さっき聞いた話を思い出して涙が零れ落ちた。

俊也さんはきっと、姫乃さん以上に私を好きになってくれることはないと思う。

配属当初から私だけ苗字で呼ばれなかったのは、苗字とはいえ、愛した人と同じ『姫野』だったからだよね。

彼が「ひめの」と呼びたいのは、たったひとりだと思うから。

寝言で彼女の名前を呼び、涙を流すほど俊也さんの中で姫乃さんは生き続けているんだ。
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