旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
結婚してすぐ離婚したとなれば、仕事がやりづらくなるだろうからって。

織田先輩が育休から戻ってくるのを機に、当初の予定通り俊也さんは商品部から異動し、本格的に後継者として働くと聞いた。離婚はそのタイミングで公表することになった。

結婚前まで住んでいたアパートは引き払った後だったため、私は実家に戻った。

今日から三日間、俊也さんは出張でいない。その間に荷物を運ぶといいと彼に言われ、仕事が終わってからお兄ちゃんと荷物を取りにきた。

最後に渡されたカードキーを、二十四時間常駐している、コンシェルジュに渡して。

これでもう二度とこのマンションに来ることはない。そう思うと、たまらなく寂しさに襲われた。


次の日、仕事終わりに玲子とイタリアンバルに食事に来ていた。

彼女にだけはすべて打ち明けていたから、こうして食事に誘ってくれたんだ。

「ねぇ、本当にこのまま離婚して芽衣は後悔しないの?」

「うん、しないよ」

迷いなく言うと、玲子は顔をしかめた。
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