旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
そう言いながら立ち上がった彼に続き、私も立ち上がった。

「じゃあ私から俊也さんを誘ったことにしたらどうでしょうか?」

「……えっ?」

いきなりの提案に彼は目を丸くさせた。

だってこのまま帰りたくないもの。

「俊也さんはだめだと止めたのに、私が言うことを聞かなかったことにすればいいんです」

「ちょっと芽衣、一度落ち着こうか」

暴走する私を彼は必死に宥める。

でも悪いけど私は自分でも驚くほど冷静だ。

「私、早く俊也さんに抱いてほしいんです! ……だ、だめでしょうか!?」

ずいぶんと大胆なことを言っているとわかっている。それほど彼のぬくもりに包まれたいの。

ジッと彼を見つめていると、俊也さんはふたり分のバッグを持ち、私の手を掴んだ。

「だめなわけないだろ? ……もういい、芽衣のご両親にはあとで土下座でもなんでもする。……今はただ、芽衣を抱きたい」

そう言うと彼は私の手を引き、会社を後にした。

向かった先は近くのホテル。
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