残酷なこの世界は私に愛を教えた



今日思ったことだが、愛珠は驚くほど人脈が広い。




『あれ? 愛珠ちゃん』


『あ、愛珠!』


『先輩、ですよね?』




電車の中、駅構内、更には路上で何度も愛珠が呼び止められた。
年齢層も広く、愛珠の同年代から年下も年上も居た。


愛珠に聞くと、友人、或いは友人の兄弟や親達らしい。




「じゃ、ちょっと」と言いながら愛珠が立ち去った後、当然彼女らも席に着こうと背を向けるのだが、慌てて呼び止めた。



「ちょっと……!」



「はい? ってヤバい! めっちゃイケメン……」



「うわ、ほんとじゃん! ヤバッ」



あの、聞いてる……?



「あの、聞きたいことがあるんですけどっ」



少し大きな声を出すとようやく俺の存在に気付いたようにこちらを見る。



「んー、じゃああっち行きましょー!」



「えっ!? いや……」



俺の手を掴んでテラス席へ連れていく彼女ら。

なんつーか、愛珠とは真逆のタイプだな!?


石橋さんに“ごめん”と手を合わせて外へ出た。






「で、スガちゃん何聞きたいのー?」



一通り自己紹介が終わった所で3人組の中の一人が言う。


スガちゃん……?

つっこみたい所だが、いちいち気にしてたら彼女らと会話すら出来ない。



「愛珠の中学の頃のこと聞きたいんだけど、教えてくれる?」



「愛珠の中学時代ー? んーとね……簡単に言うと、人気者?」



「そうそう! みーんな愛珠のこと大好きだったんだよー!」



「へー……」



何か、意外だ。
そういうイメージは無かったから。

悪い意味では無くて、人の中心にいるイメージが今まで無かった。




< 107 / 197 >

この作品をシェア

pagetop