残酷なこの世界は私に愛を教えた

薄暗い部屋




「あっ、ケーキ買ってないな」



Happinessが近くなってから隼人が重大な忘れ物に気付く。


「うわ、ほんとだ」



ケーキは必須だよね。



「俺、買ってくるわ。先行ってて」



「ごめん。ありがと!」



「おう」




隼人は走って駅へ戻って行った。



私は一人でHappinessへ向かう。




「こんにちは~」



そう言いながらドアを開けるといつも通りにドアの上部についている鈴が鳴る。




入った瞬間、違和感を感じた。



いや、視界に入っているものにはおかしな所はない。


綺麗な趣味のいい装飾が施された会計用のカウンター、壁に掛けられた可愛い鏡、木の椅子に置かれたぬいぐるみ。



でも。



何か胸騒ぎがする。




奥へ足を進める。





「えっ……?」




思わず声が出た。





そこで目にしたのは。




割れた皿、足の折れた椅子、配置がぐちゃぐちゃになったテーブル。

壁に掛かっていた絵は床に落ち、各テーブルに置かれている花瓶は割れて、水が床へと滴っている。




「うわっ!」



キッチンではフライパンの下で火がつきっぱなしになっていて恐らくパンケーキだったものが跡形もなく焦げている。



それは煙を絶えず吐き出していて火事寸前だ。

私は慌てて火を止める。



水が流れっぱなしの水道、出しっぱなしの材料。







そこは、荒れ果てていた。







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