残酷なこの世界は私に愛を教えた



どういうこと?
何があったの?



目に入る情報量に頭の回転が追い付かない。




りーさんは!?
どこにいるの!?



「りーさん! りーさん!?」




慌ててりーさんを探す。

だけど、大声で呼んでも何も反応がない。



どこにいっちゃったの!?



どこかに出掛けたとは考えづらい。
りーさんがお店をこの状態のまま放っておくとは思えない。



空き巣? いや、でもここまで関係ない所を荒らすだろうか。



分からない。




その時、この二階がりーさんの自宅になっていることを思い出す。



――タッタッタッ



自分の足音だけが聞こえる。


その音に合わせて心拍数も上がっていった。




――ガチャッ








「っ……」




何、これ……。









それは、あまりにも衝撃的な光景だった。



下とは比べ物にならなかった。




窓が割れ、白い壁紙に赤黒い血の跡が着いている。


荒れ果てた薄暗いその部屋の隅に、りーさんの姿があった。




「りーさんっ!」




彼女は床に座っていた。



項垂れ、腕は力無く床に圧力を加えている。



近付くに連れ、よく見えるようになる。





「りーさん!」





彼女の顔や体には、複数の殴られたような内出血の跡があった。

血も出ている。



意識はない。




「りーさん! しっかりして! ねえ!」




肩を揺するが、うめき声ひとつ立てない。





その時、りーさんの手の中のものに気付く。




漫画でしか見たことは無いが、これは……。










妊娠検査薬……?








< 162 / 197 >

この作品をシェア

pagetop