残酷なこの世界は私に愛を教えた



「ちょっと敦、愛珠ちゃんに目移りしてんじゃ無いでしょうね?」



背中からりーさんの声が飛んでくる。



「ええ!? 何言ってんの、俺は昔から芽里一筋だって言ってんじゃん!」



りーさんに駆け寄る長池さん。



「けしからんな、敦くん」



「ちょ、ちょっと待ってくださいよー、お義父さん!」



「あははっ」



自然と笑ってしまう。



長池さん、もう須貝家に馴染んでる。すごいなあ……。



「何かいいね、こういうの」



「え?」



隼人は不思議そうな顔をする。



「ううん。なんでもない。さ、食べよ!」



「おう」



――チュッ



その声と共にキスが降ってくる。



「な、何して……!」



やっぱりいつになっても隼人の不意討ちのキスには慣れない。



「そんな可愛い顔すんのが悪い」



「ヒューヒュー! 熱いね、若い二人は」



りーさんの茶化しに体温が上がるのが分かる。

いや、だからね? 色々とオープン過ぎるのよ!



と、手で顔を冷やしていると、みんなの視線の間を縫って長池さんがりーさんの頬に口付けするのが見える。


多分見ていたのは私だけだったが、りーさんの頬が微かに赤くなる。


うわー、良い顔するなあ、りーさん。


そして彼女に笑いかける長池さんも、良い顔してる。



「ほら、座って! 食べるわよ!」



お義母さんの声に、全員が席に着く。



「いただきます」


お義父さんの声にみんなの声が続く。







「「「「「いただきます」」」」」









――END――



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