旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
ガハハ…と笑う顔を見て、そういう人がいれば、こういう店で食べてませんよ、とまた答えた。



「悪かったわね、こういうお店で」


むすっとした調子で声を挟んでくる女将。
永井さんは彼女に、「まあまあ」と手を振って宥め、俺を振り返って、「いい女でも紹介してやろうか?」と重ねてきた。


「うちの会社に可愛いのがいるんだよな。名前は『未彩ちゃん』ていうんだけどな」


まだ二十五歳だぜー、と自慢する永井さんは俺の顔を見直して、先生は何歳だ?と訊いた。


「俺?三十五ですけど」

「なんだ、未彩ちゃんとは十も違うのか」


ちょっと年が離れ過ぎてんな、と呟き、向こうが相手にしねぇかもな…と続ける。


「俺はそれよりも庭の手入れが出来る職人を紹介して欲しいですよ」


少し安価に雇える人いませんかね、と問うと、永井さんは眉根に皺を寄せ、「何でだ?」と訊き返した。
その顔には、自分も一応庭師なんだけどな、と書かれてあったが__。



「…実は、俺が今住んでる家、古い旧家なんですよね。だから家も広いし、やたらと庭もだだっ広くて管理が行き届かなくて……」


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