旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
(あ……)


皆藤さんが目指す場所を見て、思わず足が竦んだ。
前を行く彼を呼び止め、和室にだけは向かわせたくないと感じたけれど……。


(もう、知られても仕方ない…)


さっき克っちゃんも庭に居たから。
何もないのに、彼が彼処にいるなんておかしいもんね。


(きっと何か勘違いしてる。私と克っちゃんとの間に何かがあるって思ってる)


何もないのに誤解してる筈だ。
だってさっき、すごく冷たい声を発してたから。


それを思い出すとシュンと肩を落として、連れて行かれるままに足を運んだ。
始めて来た時とはまた違う緊張感を覚えながら和室へと向かい、襖が開かれるのを見ていた。

和室へ入ると皆藤さんは手を離し、目線だけを縁側に向ける。
私はそんな彼の横顔を斜め後ろから見て、彼の足先が縁側へと向かうのをじっと堪えていた。


「未彩さん、俺は」


足先を向け直して私に振り返る皆藤さん。
こっちは驚いて息を吸い込み、目を丸くして彼を見上げる。

彼の顔は歯を食いしばる様な感じでぎゅっと唇を結び、手は何かを我慢するようにぐっと握り締められている。


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