旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
皆藤さんは私の目の前で、あのクシャリとした可愛い笑みを見せ、「ね?」と優しい声で問いかけてきた。



(そんなの断れるわけないじゃん……)


只でさえスーパー税理士と呼ばれてイケメンでカッコいい人なのに、こんな間近でそんな笑顔見せられて、「嫌です」なんて、とても私……言え……ない………。




「はい…」


気づけば、そんな返事をしていた。

彼はその声を聞くと安堵したように口角を上げ、ぎゅっと指先を強く握ると「ありがとう」とお礼を言って、チュッと頬に吸い付いて離れていく。

その顔を私は目を皿のように丸くして見て、ただただ鳴り響く胸の鼓動を聞いていた……。




__後日、そのことを何度も思い返した。


どうしてあの時、彼の申し出をもっと強く拒否たり、貴方の条件って何ですか?と問い合わせたりしなかったんだろうと思い出しながら、恐るべしスーパー税理士の魅力にすっかり惑わされ、打算的な結婚を決めた自分を後悔しつつも、それでも庭づくりが出来るのならいいや…と思い直して、前に進もう、と気持ちを新たに固めて決意した___。



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