旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。

「未彩ちゃんも此処で何度か顔を見たことがあるだろ。税理士の先生」

「ああ、あのメガネかけた如何にもインテリジェンスな感じの」


プライド高そうで、ちょっと苦手そうなタイプの人。


「そう、その先生が相手で、名前は皆藤脩也(かいとう しゅうや)さんと言うんだけど」

「はあ！？」


驚くと、後ろでガタン！と椅子が倒れる音がした。
振り返ってみると事務員の桂さんが目を剥き、「皆藤さん！？」と素っ頓狂な声を上げている。



「ちょっと今、皆藤さんて言った！？」


桂さんは猛ダッシュで私達のところへ来るとキッと目を吊り上げ、急に熱弁を振るわせた。


「未彩ちゃん、皆藤さんと言ったら、この辺りの会社や店では知らない人がいないくらいの税理士さんよ。しかも、勤めている税理士事務所の看板税理士で、仕事はバリバリできてカッコいいし、大学はＴ大卒で、年収は一千万から上だって話よ」


全部噂だけど…と後付けする桂さんは、それでもまだ独身だったんだ…と呟く。