次期院長の強引なとろ甘求婚


「え、畳むって、お店を閉めるっていうの?」


 まさかという想いでそう口にしたものの、ふたりの表情は硬いまま。

 冗談とはとても言えない空気に包まれ、私は慌てて声を上げた。


「ちょっと待ってよ、突然そんな話されたって――」

「突然でもないだろ……未久にも、うちの経営が厳しいことは話していたはずだ」

「そうだけど……」


 ここ数年、うちの経営が芳しくないことはわかっていたこと。

 仕入れや、価格の見直しなどをしてきたけれど、それでも足りず銀行に融資をお願いすることにもなった。


「そんな簡単に、ずっとやってきたお店を閉めるなんて、お父さんもお母さんも、それでいいの? なんとか、閉めなくてもいい方法を考えてみようよ」

「考えてきたさ、色々考えて、それでも、閉める道しかもうないんだよ……」


 父親の嘆くような声に胸が圧迫される。

 こんな決断を下そうとするからには、相当悩んで今に至るはずだ。

 だけれど、私には納得のいく話ではない。

 両親が築いてきた店を、私は跡を継いでやっていくつもりでいるからだ。

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