異世界から来た愛しい騎士様へ
★☆★
「珍しいな。おまえが急にここを訪れるなど。」
「アオレン王様、お休みのところ申し訳ございません。」
「いい。いつもシトロン国にために努めてる騎士団長の話だ。いつでも聞きたいと思っている。」
「ありがとうございます。」
セリムは、姿勢正しく礼をした後、自室のソファに座るアオレンを見据えた。
王の部屋とあり、エルハムの部屋より大きめであり家具も豪華だった。けれど、アオレン王になってから買ったものはほとんどなかった。 代々使われているものや国の人々からの贈り物ばかりだった。目新しいものはといえば、アオレン王とティティー王妃が真っ白な衣装を着て、2人で微笑んでいる絵だけだった。
アオレン王も亡くなったティティー王妃も贅沢するのを嫌がり、人々と同じ生活を望んでいたのだ。
そのため、昔のティティー王妃の噂は、セリムにとっても信じられないものだった。亡くなられてからその噂が嘘だったと知っては何もかも遅い。セリムはその事件を今でも忘れられずにいた。
「それで、セリム。話とはなんだ。」
「はい。ミツキの事について、です。」
「ミツキ?専属護衛が何かしたのか?」
「………やはり、私は彼がチャロアイトの密偵だと思うのです。」
「……セリム。その話は何回もしているだろう。」
「ですが……。」
アオレン王は苦い顔を浮かべながら、セリムを見ている。
セリム自身も、もう何度も王に話している事なのかは自覚している。けれど、それぐらいに彼を疑っているのを分かって欲しいのだ。
けれど、アオレン王はミツキを信じきっているのだ。