異世界から来た愛しい騎士様へ
エルハムは、その事についてゆっくりと話し始めた。
奇襲の夜から、半日以上が経っており今は次の日の夕方だった。
その後、警備に当たっていた騎士団から話しを聞くとエルハム達がコメットに襲われる前に、城の門付近で別のコメットが現れたというのだ。そのコメットは、散々城の周りを逃げ回った後、森へと逃げていったというのだ。そちらの援護へ向かった騎士団員が多かったため、城の警備が手薄になってしまったのだ。そのため、本来の目的はエルハムを狙ったものであり、城の門のコメットは囮だったという結論になった。
「なるほど……周到に準備されたものだったという事ですね。」
「えぇ……。人数は数人とは言え戦力が高い人達ばかりみたいだから、侮れないわ。セリムの怪我だけで他に被害はなかったから安心してね。」
「そうですか。他の騎士団や町の人々に何もなかったのは幸いでした。」
やつれた顔だったが、エルハムの言葉を聞いて、少し安堵した表情を見せたセリム。自分が倒れた後のシトロン国が心配で仕方がなかったのだろう。
「それでね。あなたは傷をしっかり治して貰いたいと思っているの。だから、団長の仕事を代理で他の人に………。セリム、無理をしては………。」
エルハムがそこまで言った時だった。
セリムはまだ痛む体のはずだが、ゆっくりと体を起こした。
そして、鋭い目力でエルハムを見据えたのだ。