異世界から来た愛しい騎士様へ



 彼には思い当たる事があったのだろう。
 ミツキは小さい体を震わせて、俯いてしまった。どんなに強くても体はエルハムより小さい男の子だ。きっと年だって下だろう。
 そんな彼が何らかの理由で異国に着いて、ひとりで生きていくのは、困難だろう。

 もし、自分のがその立場だったら?と考えると、とても恐ろしいとエルハムは思った。
 だからこそ、彼を助けたい。
 笑顔にさせてあげたい。そう思った。


 それに………彼ならば自分と同じなのでは、とも思ってしまうのだ。

 

 エルハムは、ゆっくりと彼の右手を取り、両手で包んだ。ミツキは驚き、体をビクつかせたが、手を払うことはしなかった。


 「私はあなたをこの国の騎士団に入って、そして私の専属護衛になって欲しいと思ってる。」
 「っっ!何を勝手な事をっ!」
 「………あなたの望みは何?それを叶えたい。それを叶える間だけでいいわ。あなたは、ここを出ても一人で暮らすのは困難だもの。手伝わせて。そして、あなたのすばらしい剣術で騎士団となり、私たちを守ってほしいの。」
 「………………。」


 ミツキの手は、とてもゴツゴツしていた。自分よりも小さいのに、手のひらには豆が出来ていた。ミツキが、剣術を磨くために努力をしてきたのが伺えた。
 
 彼は繋がれた手を見つめ、しばらくの間考えていた。

 そして、またあのまっすぐな視線でエルハムを見た。吸い込まれそうな瞳というのは、こういう物なのだと思うほどに、ミツキの真っ黒な瞳がとても綺麗で、エルハムは目が離せなかった。


 「俺は、守りたい。……だから、強くなりたい。」


 ミツキは、言葉だけは強かったが、彼はまたあの泣きそうな顔でこちらを見つめていた。
 そして木の剣を持つ左手は、ギリギリと強く握りしめられているのを、エルハムは忘れることが出来なかった。





 

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