異世界から来た愛しい騎士様へ



 「俺の国では魔法も妖精もなかった。それはおとぎ話の世界だけだった。」
 「そうなの………?でも、それならどうやって生きていたの?」
 「人間の力だけで、水を綺麗にして、火を自由に操るようにして、作物も自分達で天気と抗いながら作っていた。」
 「……そんな世界があるなんて。すごいね。素晴らしいわねっ!」


 エルハムは、そんな世界を聞いて、目をキラキラさせた。人々の力だけで生きていく。それは理想だとエルハムは思っていた。
 しかし、ミツキの話を詳しく聞けば聞くほど、人々の暮らしは豊かすぎるほど豊かで、とても便利で理想的なものだった。


 「………そんな暮らしがあれば、人々の争いもないのでしょうね。」
 「そんな事はない。殺人事件は多いし、他の国では戦争もしてる。貧富の差も激しいし、幸せを見つけられないって言ってる大人も多いらしいし。」
 「………そうなの?なんだか不思議ね。………あっ、こちらの国の話を教えなきゃいけないのに、ミツキに沢山教えて貰ってしまったわ。ごめんなさいね。でも、とっても嬉しいわ。」
 「いや、それはいいけど。」


 ミツキは少し頬を染めながら、そう返事をした。ミツキは前に居た国の話しをする時は、とてもイキイキしており、楽しそうなのをエルハムは感じていた。
 彼が自分に話しをすることで、思い出して悲しむかと心配していたが、話して嬉しそうにしてくれるのであれば、また話を聞きたいともエルハムは思った。それに、エルハム自身も彼の国の話に興味を持ったのだ。


 「それと、ずっと言いそびれて居た事があるんだけど。」
 「え?何かしら?」

 

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