異世界から来た愛しい騎士様へ
シトロンの事や周辺諸国、歴史なども彼に伝え終わると、エルハムには教えることがないと思っていた。
けれど、1つだけ彼が苦戦している事があったのだ。
「これは、何て書いてある?」
「あぁ、これは、猫はお腹が空いています、よ。」
「………なんだか、シトロンの文字は難しいな。」
「ふふふ。何でも覚えるミツキがそんな事を言うなんて珍しいわね。」
「…………前に居た国とは全く違うんだ。」
ブツブツと言いながら、ミツキは白い紙とインクペンで、何度も同じ文字を書いていた。
シトロンの国と、ミツキが居た「ニホン」という国の話す言葉は同じなのに、書く文字は違っていたのだ。そのために、エルハムがミツキに文字を教えることになった。
本をすらすらと読めることが目標のようで、ミツキは毎日シトロンで使う文字の勉強を欠かさなかった。
「そういえば、ミツキの名前はニホンではどう書くの?」
「あぁ……平仮名と片仮名、それに漢字があって。正式なものだと、漢字で光樹。」
ミツキは、練習していた紙を使って、自分の名前を書いてくれた。それを見て、エルハムは驚いてしまった。とても細かくて、綺麗な文字だったのだ。
「わぁー………すごく難しいのね。でも、すごく整っててなんだか綺麗な形ね。」
「そうだな。画数は多いものも少ないものもある。」
「前に言ってた、光っていうのがこっち?」
ミツキが先に書いた方の文字に、エルハムは指を置きそう尋ねると、ミツキは「そうだ。」教えてくれた。