女王陛下のお婿さま

 今日のドレスは薄いピンクに赤い花柄。アルベルティーナの美しい黒髪が映えるからと、マイラが選んでくれたものだ。


「でもお気を付けてくださいね、アルベルティーナ様。うちの侍女たちがもう三人も被害にあっていますから!」

「被害……?」


 昨夜滞在が決まってから、何人かの侍女たちがファビオ王子の世話についたのだが……

 一人は部屋を整えている間にお尻をペロンと触られ、一人は今夜一緒に寝ないかと手を握られた。もう一人は、ベッドメイキングのお礼に、危うく口付けをされる所だった。


「たった一晩でそんなですので、危なくてもう侍女たちは付けられません。ですから今は、クラウスに行ってもらっているんです」


 マイラはクラウスの事は彼の名前で呼ぶ。彼が爵位のある貴族の子息だと知ってはいるが、仕事上ではマイラの方が上だからだ。クラウスもアルベルティーナもそれは心得ているので、彼女がそうする事に問題は無い。

 そもそも、二人を子供の頃から世話しているマイラには、アルベルティーナもクラウスも文句なんて言えないのだが。

 そんなマイラが『気をつけろ』と言うからには、ファビオ王子は相当な曲者なのだろう。アルベルティーナはうんざりして、もう一度ため息を吐いた。
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