神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
びゅうんと鋭い音を立てて、冷たい風の諸刃がその黒い四肢を薙ぎ払うと、それは凄まじい風の渦に巻き込まれ、放たれた闇の魔物は、黒い炎を上げて灰に成り果てていく。
彼の眼前で、緩やかに空へと消えて行く諸刃の風。
その向こう側にいる、レイノーラの嘲笑うかのような微笑みを、スターレットは、凛とした深紅の眼差しで真っ向から睨み据えた。
炎の牙に捕らえられたその右腕の傷から、とめどなく鮮血が流れ落ち、乾いた地面に赤い斑点を描いていく。
レイノーラは、そんな彼の姿を青玉の瞳で見やりながら、さも可笑しくて仕方が無いというような表情で嘲りながら言うのである。
『ロータスの大魔法使いが、形無しですわね?愛しさの種を宿すと、例え大魔法使いであっても、そんな醜態を晒(さら)すのですね、可笑しい』
『黙れ・・・闇の者であるそなたには、わかるまい・・・・!』
感情の抑えられたスターレットの低く鋭い声が、ラレンシェイの体に巣食った女妖にそう言い放つ。
『あら、わかっていますわよ、言ってあげましょうか?
この女の凛とした姿に驚嘆し心を奪われて、しかし、責務のためにそれを押し殺した・・・ただの気の迷いと自分を制したのに、この女はまた貴方の前に姿を現した・・・あの時この女に触れていれば、この女が王都に上ってくることもなかったのかもしれない・・・・実に面白いお話だわ!
ロータスの大魔法使い(ラージ・ウァスラム)ともあろう者が、武器を振う野蛮な女に愛しさの種を宿すなんて!』
『黙れと・・・・言っている!!』
スターレットの秀麗で雅な顔が、怒りにも似た鋭く不快気な表情に歪んでいく。
荒野を渡る疾風が、夕闇の茜に彩られた彼の輝くような蒼銀の髪を虚空に乱舞させた。
『あら・・・・随分とムキになられるのね?もう種は芽を出してしまったのかしら?』
レイノーラの嘲り声が、荒野を渡る風に飛ばされていく。
砂塵を舞い上げ吹きすさぶそれは、不吉なほどに美しい落日の空に悲鳴のような高い声を上げた。
スターレットの肢体を包み込む疾風が、煌くように蒼き閃光を巻き起こし始める。
爛と輝く深紅の両眼が、激しく揺れる蒼銀の前髪の下で僅かに細められる。
知的な彼の唇が、呪文と呼ばれる古の言語を紡ぎ始めた・・・
彼の眼前で、緩やかに空へと消えて行く諸刃の風。
その向こう側にいる、レイノーラの嘲笑うかのような微笑みを、スターレットは、凛とした深紅の眼差しで真っ向から睨み据えた。
炎の牙に捕らえられたその右腕の傷から、とめどなく鮮血が流れ落ち、乾いた地面に赤い斑点を描いていく。
レイノーラは、そんな彼の姿を青玉の瞳で見やりながら、さも可笑しくて仕方が無いというような表情で嘲りながら言うのである。
『ロータスの大魔法使いが、形無しですわね?愛しさの種を宿すと、例え大魔法使いであっても、そんな醜態を晒(さら)すのですね、可笑しい』
『黙れ・・・闇の者であるそなたには、わかるまい・・・・!』
感情の抑えられたスターレットの低く鋭い声が、ラレンシェイの体に巣食った女妖にそう言い放つ。
『あら、わかっていますわよ、言ってあげましょうか?
この女の凛とした姿に驚嘆し心を奪われて、しかし、責務のためにそれを押し殺した・・・ただの気の迷いと自分を制したのに、この女はまた貴方の前に姿を現した・・・あの時この女に触れていれば、この女が王都に上ってくることもなかったのかもしれない・・・・実に面白いお話だわ!
ロータスの大魔法使い(ラージ・ウァスラム)ともあろう者が、武器を振う野蛮な女に愛しさの種を宿すなんて!』
『黙れと・・・・言っている!!』
スターレットの秀麗で雅な顔が、怒りにも似た鋭く不快気な表情に歪んでいく。
荒野を渡る疾風が、夕闇の茜に彩られた彼の輝くような蒼銀の髪を虚空に乱舞させた。
『あら・・・・随分とムキになられるのね?もう種は芽を出してしまったのかしら?』
レイノーラの嘲り声が、荒野を渡る風に飛ばされていく。
砂塵を舞い上げ吹きすさぶそれは、不吉なほどに美しい落日の空に悲鳴のような高い声を上げた。
スターレットの肢体を包み込む疾風が、煌くように蒼き閃光を巻き起こし始める。
爛と輝く深紅の両眼が、激しく揺れる蒼銀の前髪の下で僅かに細められる。
知的な彼の唇が、呪文と呼ばれる古の言語を紡ぎ始めた・・・