神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
『我は呼ぶ 天駈ける風の飛竜 その翼は姿無き刃
その爪は空を薙ぐ矢 その牙は永久なる矛・・・』
天空から来たる風の飛竜の力を呼び起こすこの言葉を、全て口にしてしまえば、例え強力な術を持つ闇の者であろうと、まともに食らえば間違いなく跡形も無く消し飛んでしまうだろう・・・
今、目の前にいるのは、あの気高き異国の女剣士ではない。
だが、蒼き光を巻き上げる疾風の向こう側に、何かを確信しているかのように、身動(みじろ)ぎもせずに不敵に笑う女妖の顔は、彼女のまま・・・・
寸前の所で、彼が躊躇するだろう事を、レイノーラと言う名のこの性悪な女妖は知っているのかもしれない。
ならばなおのこと、この魔物を見逃す訳にはいかないのだ・・・
しかし、次の言葉を口に出しかけた、その瞬間だった。
性悪に歪んでいたレイノーラの美麗な顔が、不意に、激しい苦悶の表情を浮かべ、その冷たい青玉の瞳をカッと大きく見開くと、頭を抱えて地面へと崩れ落ちたのである。
「!?」
突然沸き起こった彼女の異変に、スターレットは、思わず、呪文を紡がんとした唇を止めた。
形の良い眉を眉間に寄せて、彼の深紅の瞳が、頭を抱えたままそのしなやかな身を捩(よじ)るレイノーラの姿を、真っ直ぐに見つめやる。
『おのれ・・・・この女!!』
搾り出すような声でうめいたレイノーラの青玉の瞳が、急速に、あの凛とした茶色の瞳へと変貌していく。
両手で頭を抱え込み、長い髪を振り乱しながらレイノーラは乾いた地面に両膝をついた。
美麗なその顔を覆うかのように、長い黒髪が揺らめき綺麗な頬に降りかかる。
乱れた髪の合間でゆっくりと顔を上げ、苦悶にうめく妖艶な紅の唇から出た言葉は、彼が予想だにしていなかったものだった・・・・
「臆病者!何を躊躇う!?早く私を討て!!
この私を、アストラたるこの私を!!おぬしは魔物に落としたいのか!!?」
その爪は空を薙ぐ矢 その牙は永久なる矛・・・』
天空から来たる風の飛竜の力を呼び起こすこの言葉を、全て口にしてしまえば、例え強力な術を持つ闇の者であろうと、まともに食らえば間違いなく跡形も無く消し飛んでしまうだろう・・・
今、目の前にいるのは、あの気高き異国の女剣士ではない。
だが、蒼き光を巻き上げる疾風の向こう側に、何かを確信しているかのように、身動(みじろ)ぎもせずに不敵に笑う女妖の顔は、彼女のまま・・・・
寸前の所で、彼が躊躇するだろう事を、レイノーラと言う名のこの性悪な女妖は知っているのかもしれない。
ならばなおのこと、この魔物を見逃す訳にはいかないのだ・・・
しかし、次の言葉を口に出しかけた、その瞬間だった。
性悪に歪んでいたレイノーラの美麗な顔が、不意に、激しい苦悶の表情を浮かべ、その冷たい青玉の瞳をカッと大きく見開くと、頭を抱えて地面へと崩れ落ちたのである。
「!?」
突然沸き起こった彼女の異変に、スターレットは、思わず、呪文を紡がんとした唇を止めた。
形の良い眉を眉間に寄せて、彼の深紅の瞳が、頭を抱えたままそのしなやかな身を捩(よじ)るレイノーラの姿を、真っ直ぐに見つめやる。
『おのれ・・・・この女!!』
搾り出すような声でうめいたレイノーラの青玉の瞳が、急速に、あの凛とした茶色の瞳へと変貌していく。
両手で頭を抱え込み、長い髪を振り乱しながらレイノーラは乾いた地面に両膝をついた。
美麗なその顔を覆うかのように、長い黒髪が揺らめき綺麗な頬に降りかかる。
乱れた髪の合間でゆっくりと顔を上げ、苦悶にうめく妖艶な紅の唇から出た言葉は、彼が予想だにしていなかったものだった・・・・
「臆病者!何を躊躇う!?早く私を討て!!
この私を、アストラたるこの私を!!おぬしは魔物に落としたいのか!!?」