お前がいる場所が、好き。Ⅰ

「そういう陸男くんは?」



「塾の帰りだけど」



こんなに可愛い栗原さんに笑顔を向けられても、普通に答えられている寺本。
わたしが男だったら、栗原さんの笑顔にはイチコロだろうに。



「そうだったんだ! あっ、お母さんからメッセージが来てる! もう帰らなきゃ! じゃあまたね、陸男くん!」



栗原さんは、着信音が鳴った携帯を見ながら言った。


栗原さんは、相変わらず全くわたしのことを見ずに帰った。



「お、おぅ」



「ええっと……。今の子は……」



わたしは口ごもりながら、寺本に聞いた。



「ああ。小学校・中学校と一緒になった奴」



「そうなんだ。でも、あんまり記憶にないのかな?」



「なんで?」



「覚えていない様子だったし……」



わたしが、また口ごもりながら言うと、彼は納得したように頷いた。



「ああ、昔と随分雰囲気が違ってたから。でも家は近いし、結構話してた。今はそんな話してないけどね。でもモテてたんだよ、あいつ」



そりゃあ、モテるだろう。
小さな顔、黒くてつやつやした、長くてまっすぐな髪に合った、黒目がちの瞳に、上品でぷるんとした薄いピンク色の唇。


それに彼が寺本だと分かって、嬉しそうな笑顔。


黒目がちな瞳は、きらきらしていて細くて、あの上品なピンク色をした口は、端が上がっていて。


本当に可愛かった。


心から喜んでいるということが、一瞬で分かる笑顔だった。




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