夏色の初恋を君にあげる


「図書委員、ひとり?」


「う、うん。基本的には」


「へー。高校の図書室とか初めて来たけど、いいですね、静かで。落ち着く」


そう言って由良くんは、びっしりと本が並ぶ本棚を興味深そうに眺めだした。


それを合図に、私も受付カウンターに座り、途中だった本の修理を再開する。

でも、あの由良くんが同じ空間にいるこの状況で集中できるはずもない。

その姿をつい目で追いかけそうになって、慌てて視線を手元の本に戻す。


遠くから見ていることが普通だったからか、目の前の光景にいまいち現実味がない。

都合のいい夢でも見ている気分だ。



でもなぜか、由良くんと対面した時に言いようのない安心感があったのも事実なのだ。

あれはいったいなんだったのだろうか――。

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