天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 一気に捲し立てる私を先生はいやに純粋なきょとんとした眼で見る。そして…


「ふーん…じゃあ、教えてやろうか?俺のこと」

「え…?」

「聞きたい?本当の俺がどんな人間か」


 『本当の俺』─?


「…聞いてあげても、いいよ」

 そう答えると先生は口元だけ綻ばせたまま少し哀しげな眼をして更に言った。

「本当の俺を知ったら、青海は退くと思うよ?それでも?」

「……!」


 『本当の先生』って、何だろう…

 彼に何があって、何を思っているかなんて、単純で純朴なものに思えていたけれど、そう言えば私は彼の何も知らない。

 私の知らない先生の歴史。先生の本当の気持ち。

 その幽かな微笑みを見つめてもそんなもの読み取ることは到底出来なくて、もどかしい気持ちになる。

 知ってしまうのが怖い。

 でもこの人を、知りたい。知って、尚且つ、信じたい─


 「そ…そんなの、聞いてみなきゃ分かんないじゃん」


 私が少し震える声で出した答えに、先生はひとつ頷いた。

        *   *   *
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