天空に一番近い蒼─好きになった人は腰掛け体育教師でした
 力強い言葉もその穏やかな笑みも、私は信じていないんだろうか?


『綺麗になったね。ますます麗ちゃんに似てきた』

『まさか。晴くんは私より年下だし、そんなわけないでしょ』

 姉と晴くんに裏切られたと思った。誰も信じられないと思った。


 でも…


 素直に生きられないのは誰のせいでもない。自分のせいだ。


『誰も信じられない』なんて予防線を張って『好きな人』を失うことを避けてる、今も…

 そして、こんな情けない自分が嫌い。

 だから、『好きな人が傍にいる』幸福なんてない。

 どちらにしても私なんかには『好きな人は傍にいない』─


(『好きな人』…?)



「何だよ。思ってること言えよ、何でも」

 先生がふっと笑った。

 優しくて穏やかで胸が痛くなるほど。


「……」



『じゃあな』って言葉が怖かった。いなくなって欲しくなかった。


 あぁ私…

 この人が好きだ…


 信じたいんだ、この人を。

 なのに私は…
 私は…



「…信用なんて、出来ないよ」

「…何で?」

「だって…先生隠し事ばっかだもん…
 本当はスポーツクラブのインストラクターだってことを隠して女子校に入り込んでるし、違反だって知っててこっそり女の子たちとアプリでやり取りしてるし、実はお姉ちゃんのこと…好きだし、そのこと秘密にしてって言うし…

 …信じるわけないじゃん」

「……」

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