GUESS
「どれくらいの恐怖を感じたら人は泣くと思う?」

「そっりゃあ死にそうな程のでしょ。」

「ぶっぶー。違うんだな。」

「ほお…。」

「死にそうな程の恐怖の時は全然泣かないよ。」

「はあ、じゃあどれくらいだ?」

「絶対死ぬことはないって分かっている時の恐怖だな。」

「よく分かんないな。ていうか、何で知っているんだ?」

「身を持って体験した。」

「と、言いますと?」

「俺は殺されそうになった事がある。」

「誰に?」

「そりゃあ、俺にだ。」

「お前に。か。」

「そうだ。俺にだ」

「それは殺されそうになったって言わないんじゃねーの?」

「どうして?」

「だって自ら望んで死のうとしたんだろ?」

「いいや、違うよ。」

「違やしないよ。」

「いいや。違うね。お前は何一つ分かっちゃいない。」

「お、その言い方。じゃあ俺を説得してみろよ。」

「いいか、俺は死にたいと思った事はあるけど、
 死のうとした事はないよ。
 あの時だって自ら望んで首にロープをかけたわけじゃな
 いよ?でも気付いたらかかってたんだよ。
 かけようと思った事も、かけたときも全部俺だったん
 だけどな。」

「ん?ん?お前今凄い変な事言ってるの気づいてる?」

「変な事なんか言っちゃいねーよ。」

「言ってるよ。それじゃまるで二重人格みたいだよ。」

「二重人格じゃねーよ?全部俺だもん。」

「だよな。全部お前だよな。」

「で、最初の話をするけど、死にそうだった時に感じた
 ものはあれは恐怖じゃない。」

「何言ってんだお前。」

「あれは確かに恐怖だけど、確かに恐怖じゃないんだ。
 あの時にしか感じる事が出来ないとっても貴重な体験
 だ。
 恐怖よりも酷いもんだあれは。」

「ほほぉ、それで?涙は?」

「流れはしないよ?でも出る。」

「そりゃあ、話しが違うぜ。」

「ありゃあ、流れてはねーよ。溢れてんだよ。
 漏れてんだよ。
 涎と一緒に漏れ出てくるんだよ。」

「うっへー、気持ち悪!」

「そうさ、気持ち悪いよ。」

「で?で?お前は何を伝えたい?」

「これとっいってねーよ?
 ただ自殺する人すげーなぁって話だよ。」

「はぁぁぁ?
 なんだったんよ今までの時間は。
 返せよ。」

「いやいや、あいつらはすげーよ。
 今から体験してみるか?」

「どういう意味だそれは?
 別にいいよ。」

「まぁまぁ、そんな事言わずにちょっと目を瞑ってみて?」

「はぁ?まぁよく分からんけど瞑ればいんだな?」

「おうよ。」

「ォッ。」

「どう?どう?どんな感じ?」

「確かになぁ。お前の言う通りかも知れないなぁ。」

「だろ?だろ?」

「うん。
 いいから手を話してくれないか?」

「無理だね。」

「はぁ。」

「どう?どう?どんな感じ?」

「話と違うなぁ。」
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