ピュアダーク
 コールが人探しを再開するが、ダウンタウンを離れ車で辺りをうろついた。

 警察の車をやけに見かけ、何かあったと気になった。

 メインストリートを走らせていると、大型チェーンレストランの駐車場に目が行った。

「こういうところはランチタイムで車が沢山停まって商売繁盛なはずなのに、客が少ない上に警察の車が停まってやがる。ここでなんかあったんだな」

 近くに駐車して車から降り、通りがかりの通行人に声を掛けてみた。

「ああ、昨日、ここで通り魔が女性の首を絞めてちょっとした事件になったんですよ。なんせその犯人は目の前で消えるし、ちょっとしたミステリーとなり、気持ち悪がって客足が遠のいてしまったみたいですね。まあ銃で撃たれなかったのが幸いでしたけど」

 現場を一目見たくてその男はここに現れたと言い、写真を撮っては、後でブログにでも載せるようなことを言っていた。

「その通り魔はどんな風貌だったんですか」

「さあ、そこまでは知りませんが、フードを頭からすっぽりかぶって、ずんぐりむっくりでふてぶてしかったらしいと目撃証言で言ってましたけど、誰も顔は、はっきり見てなかったそうです。目の前で消えたとか言ってましたから、未知の生物か何かかな、なんて私は想像してしまいましたけど」

 男は冗談めいた自分の言葉に一人で受け、高らかに笑った。

 コールはニヤッとすると、男に礼を言って現場に近づいて行った。

 そして手当たり次第にふっと息を吹きかけながら歩いていた。

 そしてきらっと光り、糸が張り巡らされているのが一瞬見えたのを確認した。

「ゴードン! ここで罠をしかけてたのか。なるほど。ということは獲物が引っかかったのか。しかし昨日はホワイトライトの気配などしなかったが。何かの誤作動だったのか。とにかくゴードンを見つけなければ」

 コールは周辺を車で走らせた。

「あいつが瞬間移動できる範囲といえば、半径1マイル(約1.6km)程度。ここからそれを考えればどこがあいつの隠れ家になるんだ」

 コールは地図で照らし合わせると、はっとする心当たりがあった。

 何年も空き家になってる大きな屋敷。

 周りには大きな池もあり自然が溢れているが、そこは滅多に人も寄り付かない。

 何十年か前に殺人事件の舞台となったちょっと名の知れたところだった。

 売りに出しても買い手がつかない程の家。

「ゴードンはそこにいる」

 コールは自分の勘を信じて、心躍るように目的地へと向かった。
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