ピュアダーク
「コール、何しにきたんだよ。おいら何もしてねーよ」

 コールが怖いのか、丸い体をさらに猫のように丸め、ゴードンは怯えていた。

 力関係がありありと見えた。

「あれだけノンライトたちの世界で騒ぎを起こしておいて、何もしてないだと。嘘つくと為になんないぞ」

 ゴードンは床に投げ飛ばされた。

 体がふくよかで丸いせいかボールのように跳ねて転ぶ。

 乱れた少ない髪を後ろになぜてぷくーっと頬を膨らませた。

「痛いじゃないか。ただでさえ、足腰が痛いっていうのに。もしかして昨晩のことを聞いてるの? あれはホワイトライトじゃなかったよ。引っかかった反応がいつもと違ったからおいらも変だと思ったんだ。そして確かめにいったらやっぱり違った。ディムライトよりは力ありそうだったけど、中途半端な奴だった。だから腹立って虐めてやった」

「ホワイトライトじゃなかったのか。それでも反応はあったってことなんだろう。そいつは何者だ」

「そんなのわかんない。役に立たないものはいらないからどうでもいい」

「まあ、それはいいとして、そこで物は相談だが、罠をあちこちに仕掛けてくれないか。ホワイトライトがこの辺にこっそりと潜んでいるんだ。それをどうしても見つけたい」

 コールの顔をちらりと見ながら、嫌悪感を露にし、ゴードンは渋るような態度を見せた。

「罠ならもうあちこちにしかけてある。おいらもホワイトライトを手に入れたい。足腰が痛いからそれ治して欲しいだけ。それ以上のことは望まない」

「お前、わかってねぇーな。ホワイトライトに足腰の痛みを治して欲しいだと。あいつらは医者か。それよりも、ホワイトライトのもつライフクリスタルを手に入れれば、あいつらの世界に行き来でき、永遠の命を持つことができるんだぜ」

「ライフクリスタルは彼らの命のことじゃないか。そんなのとったらホワイトライト死んじゃう」

 ゴードンはダークライトでもすれてない部類だった。

 深く物事を考えられず、他のダークライトの間では頭が足りないと見下されている存在だった。

 それがゴードンのコンプレックスでもある。

 だがホワイトライトを見つける能力は誰よりも優れているために、自分の意思とは裏腹に利用されやすい存在でもあった。

「何言ってんだ。あいつらばかりいい思いして、のうのうと永遠に暮らしてやがる。それをダークライトが乗っ取ってやるんだ。この世は面白くなるぜ。俺たちが全ての世界を支配するんだぜ。なっ、協力するだろう」

「コール、ずるいから信用できない。今までいろんなダークライト騙した」

「お前はちょっと頭の足りない奴だと思っていたが、ここまでバカだったとは。俺に逆らうってことはどういうことかわかってるのか」

 コールは凄みをきかせ、褐色の目になり数体の影を呼び集めた。

 ゴードンはそれに取り囲まれ、じりじりと追い詰められていった。

「何すんだよ。おいら、影嫌い。こいつらおいらの中に入って好き勝手する。暴れたらリチャードに目をつけられる」

 影は通常ノンライトにとり憑くが、ゴードンのような気弱なタイプのダークライトも、ときには影が入り込み、いいように弄ばれる。

「昨日あれだけ暴れておいて、もうとっくに目を付けられてるんじゃないのか。そんなこともわからないのか」

「あれは、殺してない。腹立ったからちょっと虐めただけ。あれくらいならリチャード許してくれる。でも影がおいらに入ったらのっとられて誰か殺しちゃう。そしたらリチャードに抹殺される。嫌だ」

 ゴードンは弱いために、他のダークライトに利用されないようにと、リチャードのいるこの土地をわざと選んでいる。

 悪事を働きたい、力を持つダークライトは反対に、この土地を敬遠するので、無茶をしなければ平和に暮らせるのをゴードンは良く知っていた。

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