ピュアダーク
「ヴィンセント、ライトソルーションを飲んだわね」

 アメリアが指摘した。

「はい。今朝飲みました」

「どこで手に入れたんだ」

「そんなことはどうでもいいんだ、パトリック。とにかくこれで好都合だ。こんな形で役に立つとは思ってもみなかったけど」

 喜んでいいのか、悲しんでいいのか、ふと微笑んだその顔は哀愁を帯びていた。

 これも運命。

 こうなることのためだったと思うと、ヴィンセントはきりっと眉を引き締めた。

「タイムリミットは日没。それまでに戻れなければ俺はベアトリスのシールドにはじかれ、意識がない体は焼かれてしまう。意識を共有してるときに体だけ離されても、俺の意識はベアトリスの中で消滅する。どっち道同じこと。だが時間はたっぷりある。その間に必ずベアトリスの意識を戻して見せます」

「もしも、万が一の時は……」

 パトリックは不安が拭えない。

「そんな心配、俺がする訳ないだろう。必ずベアトリスの意識を引っ張って戻ってくるさ。俺だってベアトリスを守らないといけないんだ。これぐらいで俺がへたばるはずがない。パトリックばかりに美味しいところもっていかれちゃ困るのさ。お前には負けたくない」

「わかった。癪だけど、お前を信じるよ。必ず成功させろよ」

「ヴィンセント、無理はしないで。ダメだと判ったら、すぐに切り離して戻ってきて」

 パトリックとアメリアは祈る思いでヴィンセントを見つめた。

 ヴィンセントはベアトリスを愛しげに眺める。

 ベッドの側にあった椅子に腰掛け、ベアトリスの手を両手で握った。

 ──やっとまた触れられたよ、ベアトリス。さあ、目覚めるんだ。早く目を覚まして、日没のタイムリミットまでに俺を抱きしめておくれ。

 ヴィンセントとベアトリスの体に異変が起きた。

 二人の体から柔らかい煙のような光が放たれると、それが絡み合って調和し二人は膜に覆われるように包まれた。

 ヴィンセントはそのとき、ばさっと前かがみに倒れこんだ。

 パトリックとアメリアは息を飲み、二人を見守るしか術がなかった。
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