ピュアダーク
 ヴィンセントは左隣に座るサラを飛び越えてベアトリスに熱い視線を送り続ける。

 この日何が起こるかもう後には引けないと最初から飛ばしていた。

 またそれを見たパトリックはヴィンセントの態度に心かき乱された。

 そして疑念が沸々とわいてくる。

 ──あいつ、何か企んでいるに違いない。サラも無理に頼んだとはいえ、自分のプロムデートが他の相手に気を取られて、どうしてあんなに平気で僕を見て笑っ てられるんだ。さっきはヴィンセントがプロムに参加した姿をベアトリスに見せることに気を取られて深く考えなかったが、よく考えたら、ディムライトがダー クライト と一緒に行動すること自体変だ。まさかサラも一枚噛んでるのか。

 ヴィンセントの右隣にはコールが座っている。

 コールはパトリックとヴィンセントがベアトリスの取り合いに必死になってる様子に気がつき、最後に笑うのは 自分だと、二人を嘲け笑っていた。

 ベアトリスはこのテーブルのメンバーに落ち着かず、ただ下を向いていた。

 そしてヴィンセントが言った言葉に惑わされていた。

 ──自分しか知らない夢なのに、ヴィンセントは知ってるような口ぶりだった。でも、あの時ヴィンセントが口にした言葉……  まさかそんなことありえない

 閉じ込めていた思いがヴィンセントを目の前にしてまたくすぶり始める。

 そして、プロムの開始。

 会場が一気に盛り上がる中、このテーブルだけはベアトリスを見つめるそれぞれの目が怪しく光る。

 各々の計画のために──。
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